残暑はまだまだ厳しいですね~。ですが、
少しずつ秋を感じる日もあるのではないかと思う9月になりました。
1年以上前にベストセラーとなった良書を今月はご紹介します。
(遅すぎ~!古すぎ~!という声が聞こえてきますが...)
個人的にとても楽しく読め、いつかこのブログに書きたい!と思いながら
どんどん新しいベストセラーが生み出されてくるので、1年以上も寝かしたままに
なってしまいました。
2016年に一番売れた本です。
そして「角栄ブーム」が再熱した年でした。
この本を推薦する理由
角栄とは第64・65代の内閣総理大臣を務めた
「田中角栄」氏のことです。
この本は、現在60~70代の男女にもっとも読まれたようで、
逆算すると田中角栄氏が総理大臣就任当時に20~30代だった方々の
興味を集めた結果とも言えます。
今の私たちが30~40年後に、「安倍晋三」現内閣総理大臣の功績や、
現在では知りえない日本の政界の実情を知ろうとするようなものです。
そして、もう一つベストセラーになった理由に著者が
元東京都知事、石原慎太郎氏であったこともあるのではないかと思います。
二人が共に政界に身を置いていた時代には、
石原慎太郎は田中角栄の金権主義を批判し、真っ向から弓を引いた人間でした。
反田中の急先鋒だった石原氏が、今なぜ「田中角栄」を天才と称した著書を
世に送り出したのか!ということに注目が高まったのではないでしょうか。
著者は都知事、政治家を退いた今こそ、田中角栄の政治家としての先見性と実行力、
人を惹きつける人間性に敬服し、
さらに田中氏が失脚した経緯をも「当時の真実」として
現在に知らしめるために著書をしたためたと唱えています。
今、このコラムを読んでくださっているスタッフの方々は
「田中角栄」という名前を知っているけど、
具体的な功績についてはあまり知らないという方もいらっしゃると思います。
時流を読むとは、現代のことだけではなく、
ときには過去の真実にも目を向けることも必要ではないかと思い、
今の日本の礎を築いた「田中角栄」を読み解いていただきたいと思い、
今月はこの「天才」をご紹介したいと思います。
本の全体像(概略)
この本の書き方にも面白いところがあります。
それは筆者である石原慎太郎が、田中角栄そのものになったように
一人称で書かれていることです。まるで99歳の田中角栄が自らを
書きおろしているような文体で、「俺は~~だった」という風に、
生い立ち、幼少時代期のコンプレックス、政界入りのきっかけ、
福田元首相との政争・権力闘争の内幕、田中派分裂の舞台裏、
家族との軋轢など、汗と涙で彩られた田中角栄の生涯がつづられています。
高速道路の整備や、新幹線の延長配備、空港の整備の促進、
原子力推進など資源外交をも思い立ち、
現在の日本にもその恩恵と影響を与えた
田中角栄の功績は素晴らしいものです。
しかし、すべては簡単に成し遂げられたわけではなく、
いつも好奇心を持ってアンテナを張り、若い役人や企業人などを、目白にある自宅にまで
呼びつけ、新しい発想や人となりを見極め、強かに根回しを行い、お金の威力をも使い、
人脈を広げていきました。
著者は、その古き手腕に憧れや思慕を抱きつつ、「人間の人生を形づくるものは、
何といっても他者との出会いに他ならない。私の人生は、今思えば様々な他者との
素晴らしい、奇跡にも似た出会いに形づくられてきたものだ」と
自分自身の人生とも重ね合わせているかのようです。
その田中角栄が、アメリカの虎の尾を踏みつけて怒りを買ったことで、
葬られることは許しがたいことだったのだと、
角栄失脚の引き金となったロッキード事件の真相をも
伝えています。
医療プロフェッショナルとして役立ててもらいたいポイント
ドクターをはじめ、スタッフの方々の働きで成り立っています。
いわゆる小さな国家ともいえるのではないでしょうか。
総理大臣にまで上り詰めた田中角栄は国家の長ではありましたが、
ただ、田中角栄たる人物であってもひとりで成し遂げれる仕事はないのです。
彼を信頼し、彼のために協力していこうと、周りの人間が参謀として業務を
随行しないと、日本列島改造論は遂行できなかったでしょう。
政界に入る前に田中角栄は、土方の仕事に携わり、この経験が世の中で
一番末端の仕事をしている人間の力こそ、世の中を結果として
大きく変えていくことを実感したと語ります。
日常の一人ひとりのスタッフの正確、迅速、丁寧な
患者様応対なくしては、病院の信頼にはなりえず、
患者様、地域の満足には当たり前のようにしている
医療サービスこそが選ばれるクリニックへの高い評価に結びつくということです。
もう一つ田中角栄自身が「人への敬意の払い方、処し方」に影響を受けた
エピソードがあります。
町中でお葬式や霊柩車に出会ったりした時は、
必ず立ち止まり帽子をとって一礼していたのです。
その行為に驚いた人が、本人に訳を聞いたら、
「たとえ見知らぬ者でも、その人間の一生の意味や価値は傍らには計り知れぬものが
あるに違いない」と言っていたことを角栄は知りました。
たとえ身も知らない人の人生であっても、
命や人生への尊厳を表す姿勢は美しいものです。
角栄はその後、知り合いとの人生最後のお別れには
精一杯誠意を見せてきたといいます。
お葬式や最期のお別れなんで...縁起でもないと感じられるかもしれませんが、
一期一会の精神をもって、数ある医療機関の中で私たちの病院を
選んでいただき、医療サービスを受けていただくご縁に感謝し、
患者様お一人おひとりの人生そのものに、
来院され目の前にいらっしゃるその瞬間にこそ敬意を
表せるように心かげていただきたいと願います。
されていきます。
その医療を受けていただく患者様、例えば60代以上の
患者様ならば、この「天才=田中角栄」の時代背景を身を
持って生き抜かれたことでしょうし、潜在意識の中で共感を感じているのではないかと
思います。
そのような患者様のこれまでの人生や価値観を知るひとつの手助けにも
なる本だと思います。
著者について
石原慎太郎
1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」
により第1回文學界新人賞、翌年芥川賞を受賞。
『化石の森』(芸術選奨文部大臣賞受賞)、『生還』(平林たい子文学賞受賞)など
著書多数
18.09.01(土)村田 小百合 カテゴリ:スタッフブログ