「豆まき」をしたあとに、年の数だけ豆を食べるのも一般的です。
「年の数」だけ、もしくは「年の数+1個を多く食べる」ところもあるようです。
そして平成31年の恵方だとう「東北東」を向いて恵方巻きを食べられた方も
いらっしゃったのではないでしょうか?
私が経営コンサルティング会社に勤めておりましたことは以前にも申しました。
当時は色々な企業に伺い、人事課長や総務部長という方々にご面談させていただく
機会が多くありました。
そこで、お客様から「『企業参謀』という本を読んだことがあるか?」
もしくは「君もコンサルティング会社に勤めているなら、読んでみたらどうだ?」と
おすすめいただいたことから、この本を読み始めました。
一番最初に読んだときの感想は忘れられません。
本文にはいり、P1~8までのたった8ページで「こんな考え方したことない!」と
少しショックを感じながら読み進めていきました。
問題解決や戦略思考には、このような視点があるんだ!と。
これまで私がなんとなく意思決定してきたことも、
こんな風に論理的に考えると自分自身の納得性が高まり、
あとあと後悔することも少なくなるな!とその最初の8ページに書かれている
身近な例話「旅行会社のパンフレットの例」「散髪屋さんの作業分解例」、
「日本旅館の宿泊料の例」を読んで、思いました。
特に営業職として顧客を説得する場合には応用していこう!と心に決めていました。
初版から今年で34年が経つ書籍ですが、今読み返しても気づきが多いので、
今月は「戦略的思考」入門としてこの本をご紹介します。
本の全体像(概略)
著者である大前研一氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーという
企業経営コンサルティング会社に入社したとき、まだ29歳であり、
経営コンサルタントしては駆け出しであったことから、
その企業コンサルティングを通じて学んだことを、
私的メモとして残してきました。
その経験のエッセンスをまとめあげたものがこの「企業参謀」です。
これからの組織が存続していくための鍵は、スタッフ一人一人が「企業参謀」となりうる
頭脳集団の一員となり、戦略的行動がとれるようになること。
特に経営、管理者層にはその一端を担う部下の育成が不可欠であり、
戦略的方針を作り出すための合理的な思考プロセス、
市場の分析方法をはじめ、戒めるべき留意点も示しています。
医療プロフェッショナルとして役立ててもらいたいポイント
さきほど、「日本旅館の宿泊料」の例が書かれてあったと申しました。
これを少し引用しようと思います。
インターネットが普及した今日では、旅行の宿泊先は簡単に、
しかも希望する条件で選ぶことができますので、
34年前の事例は古いな...(苦笑)と感じられるかもしれません。
しかし、古さを差し引いても、今日でも何かを選択する際に、客観的に分析せず、
雰囲気や誤解に基づいた判断で意思決定をすることは少なからずあります。
何かを選ぶ際などに、少し論理的に中身を吟味する方法として
役立てることが出来ると思います。
シーズン時期に京都で旅館を探していたとします。
そこで、2つの旅館を見つけたので電話をかけて値段を尋ねました。
そうすると、それぞれに次のように言われました。
A旅館 :「混んでるさかい、4500円はいただかんときつうおますな」
B旅館 :「うちは、込で4500円でよろしゅうおまっせ」
どちらも4500円という点を強調していますが、
旅館Bでは、それを込みでやってくれる(税とか、
サービス料などかたいことはいいませんよ)と言っているので、
どうしても割安な感じを受けます。
ともかく寝るだけなので、安いところでいいの!と値段だけを判断基準にするのなら、
B旅館でもちろん構いません。
しかし、せっかくの旅行だし、美味しいものは絶対に食べたい。
こんなに安くて、ちゃんとした料理がさせるのかな?とすこし心配になった方は、
もう少し違う視点で検討していきましょう。
考えられませんので、旅館Aも旅館Bも一旦同じ土俵に置いて
考えてみることから始めましょう。
そうすると、どのようなサービスの違いができてくるのか、
数字から見えてくることがあります。
左のようにグラフにして比較してみると分かりやすいのでご覧下さい。
どんな旅館であっても、変わりなく提供してくれるサービスは
「寝る場所の提供」と「食事の提供」です。
このサービスを維持するために旅館はコストをかけて維持している
わけです。この時点で"税込み"と"税・サービス別"では、
旅館がサービスにかけることのできるコストに
27パーセントの差があることに気づきます。
その次に、AもBもどちらも「寝る場所の提供」をするための固定費
(旅館を維持するために変わることなく必ずかかる費用)を
2000円として考えてみると、旅館業にとっての変動費
(状況によって必要となる費用)である「食事代」に
かけられるコストにさらに大きな影響がでることがわかります。
つまり、税込にしてくれるB旅館を選んだ場合、
A旅館に比べると実に60%近く差があるお料理が
提供される可能性が出てきます。
お弁当屋さんで1000円の商品と、600円の商品の違いがあるということです。
ここでぜひ美味しいものを食べたい!という希望をもって旅行を
企画したいのならばA旅館という選択も出てきます。
自分の希望を前提に、費用対効果を客観的に判断でき、
どちらを選んだとしても理由が明確に分かるので後悔のない旅行計画を
たてることができるのではないでしょうか。
旅館を選ぶ際に、厳密にここまで分析することも少ないと思いますが、
この事例は「安い」=「お得」という感覚的な判断から、
判断する課題の本質を読み解くことが、戦略的思考の第1歩だということを示しています。
私たちは、日常さまざまな意思決定を迫られます。
その時に物事の両面性「メリットとデメリット」などを客観的に捉えたり、
分析した上で最善、最適な判断をくだせるようにしていくことが大切です。
医療機関では、患者様はこのように値段やコストを気にしてこられることはまずありません。
つまり診療報酬というのは、同じ治療をして差し上げられたなら
同一料金が設定されているのです。
ということは、料金がほぼ同じならば、治療費以外の付加的なサービスの違いによって
「選ばれる」可能性が大きいと言えます。
旅館の例で言えば、電話をかけた時点で、「愛想の良い」「丁寧に説明してくれた」などで
選ばれるということです。
たかが電話応対といわず、医療機関で働らかれるスタッフ一人ひとりが、
ご自身の病院や医院の参謀として、コストを削減したり、
患者様が満足される戦略的応対を
日々の業務を通じて考えていただければと思います。
著者について
大前研一 1943年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業後、
東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、
マサチューセッツ工科大学大学院原子工学科で博士号を得る。
1970年から2年間、日立製作所原子力開発部技師として、
主に高速増殖炉設計に従事。
1979年にマッキンゼー社の日本支社長となる。
現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長/ビジネス・ブレークスルー大学学長として
日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。
19.02.01(金)村田 小百合 カテゴリ: