3月は卒業、転勤などの別れのシーズンでも
ありますが、木々や花々の新芽を見ると、
何だか楽しいことが起こるような
ワクワクした気持ちになります。
春はもうそこまで来ています。
これからのフレッシュな出会いから
新たな学びが始まると良いですね。
この本を推薦する理由
結婚式のスピーチで
「良いことをおっしゃっているとは思うけど、長いな~(T-T)」、
そして心の声では、
「要点だけを聴かせて!早く終わって欲しいなぁ~(;゚ロ゚)」と
感じられたことはありませんか?
テクノロジーが進み、情報が瞬時に入ってくる世の中では、
情報を受け取る側にとっては、
限られた時間の中で、取捨選択する能力が重要になってきますね。
それと同時に、情報を伝える側にも、
人の時間を奪ってはいけないという考え方と
効果的に伝える能力が必要になってくるのではないでしょうか?
10分も話をしたのに、相手はまったく理解していなかった...では
お互いにとって「時間とお金」のムダ遣いとなってしまうでしょう。
最近の働き方(人)改革に先導されるように、
"時短"をキーワードとした、
インパクトのある本です。
しかし、「1分で話せ」って、それもまた短すぎて、
何だか中身のないペラペラの内容になるのでは?
と疑ってしまう方もいるかもしれません。
ここで質問です。
ラジオのコマーシャル(CM)って何秒くらいで流れていると思いますか?
「20秒」だそうです。
CMなので、そのスポンサー企業の商品やサービスを
20秒で的確に伝えているわけです。
1分間となると、そのCMを3本流すことができますね。
こう考えてみると、1分というのは短いようで、
結構内容の濃い文章を話すことができると思いませんか?
聞く側にとっても、長々と的を得ない話を聞くより
(というか、退屈な思いはできるだけ避けたい)、
要点を絞ったシンプルな話を聞く方が、
集中力も続き、第一、頭に残りやすいですね。
そもそも話が長い人というのは、
ストーリーはおろか、事実と自分の意見を羅列しているだけかもしれませんね。
相手に伝えたいことがあれば、
「何が大事なのか」「どうしたら相手に伝わるか」ということを
まずは、きちんと整理し考えることが必要なのです。
この本によって、1分で伝わるような凝縮した言葉の選び方や、
ストーリーの作り方、伝え方のパターンを学んでいきましょう。
本の全体像(概略)
プレゼンテーションが大の苦手で、
「君の言っていることは、まったく理解できない」と
言われたことが何度もあるそうです。
そこで、言葉の選び方や、ストーリーの作り方、
伝え方のパターンなどを現場で実践しながら、
少しずつ「伝えるスキル」を磨いていかれました。
2011年には、ソフトバンクの孫正義社長の発案で、
後継者を育てるという「ソフトバンクアカデミア」に合格しました。
入校後の初回のプレゼンで、
孫社長から「おもしろいね、任せてみたいね」と
特別コメントをもらい、自分にはやっと伝える力がついてきたのだと確信したそうです。
プレゼンでは孫社長も絶賛した、納期を守ることを表した言葉、
きっちりくるから「キチリクルン」という、
「はっ」とするような超一言のキーワードなど、
著者が長い時間をかけて得てきた自分のスキルを、
余すことなく伝授しています。
本書を通して、プレゼンのノウハウを学び、
最終目的としての「コミュニケーションで相手に動いてもらう」
「きれいに話すのではなく、人の心に響く言葉、人を動かすプレゼン」には
何が大切のかを第1章から第7章を通じて体系的に語られていきます。
特に、第4章では、上司への報告などにも使える、
ビジネスの基本とも言えることが書かれてありますのでご紹介します。
それは「ピラミッドは3段で作ろう」です。
話すときには、まず最初(1段目)に結論から話します。
そして、次に(2段目)、その根拠となる理由などを2~3つ語ります。
それから、「たとえば」と言いながら、
根拠を裏付けられる事実を上げていきます。
このピラミッドによって、自分の話したいことが整理され、
無駄なく、相手を説得力できるストーリーが作成できます。
このストーリーを作れば、ほぼ完成したのと同じですが、
その中に、聞き手が想像を膨らませる事実(事例)を盛り込むことで、
具体的なイメージを沸かすことができ効果的です。
そしてさらに、覚えやすく、プレゼン全体を表現するような
キーワードになる言葉を一言、言うことで、
聞き手は、話を覚えてくれるのです。
このキーワードこそ、先ほどの記しました「キチリクルン」です。
実際に、著者が経験を積んで生み出した、
このストーリーの作り方、プレゼンの仕方、話し方のコツを学ぶことで、
誤解を生まず、上手く自分が言いたいことを伝えられる
スキルを身につけられると思います。
では、院長に「医院の改善」を提案したいことを
プレゼンテーションする場合を想定して、ピラミッドを使って
具体的に作ってみました。
こんな感じです!こ
私の提案したいこと(結論)は
「医院全体で挨拶の徹底を図る」です。
一言でいうと「愛を徹する」にも通じるので「アイテツ」プロジェクトです。
提案する根拠(理由)は3つあります。
まず1つは
「患者様とのよりよりコミュニケーションのため」です。
2つめに
「医院全体の好感度を上げるため」です。
最後の3つめの理由は
「職員同士も挨拶をし合うことでチームで働きやすくなるから」です。
そして、実際にあった事実を言いますと、
患者様から「スタッフに声をかけづらい(事実1)とか、
聴きたいことが聞けない(事実2)」と言われたことがあります。
さらに先日、○○さんから、「この医院は暗いね(事実1)とか活気がないね(事実2)」と
言われたこともあります。
スタッフ同士の挨拶では、
朝のスタッフ同士の挨拶が明るいと
1日中気持ちいいですし(事実1)、
連絡事項も漏れがなくなる傾向があると思います(事実2)。
ですので、「挨拶の徹底」=「アイテツ」を提案します。
↑
これでほぼ1分間なのですよ。
医療プロフェッショナルとして役立ててもらいたいポイント
コミュニケーションに対する考え方や対応の仕方は、
患者様の意識の変化によってこれからもどんどん多様化してくるのは
当然かもしれません。
医療機関に勤めていらっしゃる皆様は、
第1に患者様の状況や意向をしっかりと聞き取ることを
肝に銘じていらっしゃるでしょう。
そして、その状況を知った上で、
次に私たちがすべきことは、
患者様の自主性と納得を得る説明であり、
治療への自主的な協力を得ることですよね。
しかし、もし患者様が期待する治療方針と
私たち医療者側が提供したいと思う治療方針に相違があった場合、
どのようにしたらよいでしょう。
私の友人の例ですが、
彼女はある慢性疾患を抱えており、
ドクターから指示がある薬を飲み続けるように言われていました。
しかし、彼女自身の治療に望む姿勢は、
「強いと言われる薬を飲み続けることは精神的にも不安を感じる」ので、
できれば「食事療法などで改善したい」ということでした。
しかし、それを告げたあとに説明された言葉は、
「未来永劫バランスの良い食事ができますか?」
「一日1錠飲むだけで済むのですよ!」と、
詳しい説明もなく頭ごなしに、半ば強引に言われたので、
この医院に通い続けることに不安を感じたと聴いたことがあります。
患者様にとって最善、最適なものに違いありません。
そして、昨今の患者様は患者仲間からの口コミ情報や、
インターネットによって、
それがすべて正しいとは言えないようなものも
ありますが情報化は予想以上に進んでいます。
それだからこそ、医療者側からの説明に納得させてもらえる背景や裏付け、
もっと言うならば、将来の展望、リスクなども聞きたい、
教えてほしいことなどいっぱい持っているとも言えます。
先の友人の場合をピラミッドで話してみるとこんな感じでしょうか...
まずは、
結論:「○○さんは■■■という疾患なので...、治療方法としては2つ考えられます。
根拠:治療療法としては、
(1)○○というお薬を1日1錠飲んでいただく。
もう一つとしては、
(2)食事療法で改善していく方法もあります。
事実:
お薬を飲む治療法では、
(1)-①○○か月後には何らかの改善があると思います。
(1)-②ただ、副作用もあり、○○といった副作用が報告されています。
(1)-③さらに定期的に血液検査も必要となります
食事療法ですと、
(2)-①栄養士が提案したパンフレットを指し示しながら...△△に気を付けます。
(2)-②特に、△△の摂取は重要ですので、意識して日常よく取るようにしてくださいね。
といった感じです。
最後に、今までの説明でわからないところはありますか?」
「一度よく考えられて、ご意見を聞かせてください」などと、
患者側の意向を確認する姿勢を見せていただけると、
当然、納得性が高まることと思います。
↑
これでほぼ1分間なのですよ。
中心に書かれていますが、
医療機関のスタッフ同士の会議や、
他部署との取り決めなどに活かせることはもちろんですが、
人に伝えて、動いてもらう、協力してもらうことにおいては、
むしろ患者様との関係においても、活かすことができると思います。
著者について
伊藤羊一
ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリスト
Yahoo!アカデミア学長。株式会社ウェイウェイ代表取締役。
東京大学経済学部卒。1990年に日本興業銀行入行。
企業金融、事業再生支援などに従事。
2003年プラス株式会社に転じ、2011年より執行役員マーケテイング本部長、
2012年より、事業全般を統括。かつて、ソフトバンクアカデミアに所属。
孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間一位の成績を修めた経験を持つ。
2015年4月にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行う。
グロービス経営大学院客員教授として、リーダーシップ科目の教団に立つほか、
多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。